家の中では履物を脱ぐ習慣
古代より靴の文化を持ちながらも日本で靴が普及しなかったのは、日本人の「ある習慣」が原因ではないかと考えられています。それは、「家の中では、履物を脱ぐ」という習慣。家の出入りのたびに履物を脱ぐ文化の日本では、木や竹の台に鼻緒をつけた下駄や草履などのほうが便利だったのでしょうか。そのため靴は奈良~平安時代の貴族が権威の象徴として履き、江戸時代は裕福な層が雨天時の汚れを防ぐために使用していたとされます。
そして日本人が家の中で靴を脱ぐ最大の理由は、湿度が高く、足が蒸れやすい日本の気候において家の中や自身の足を清潔に保つための知恵だと言われています。また、靴下が日本へ伝来したのは16~17世紀頃。着物文化だった日本が、明治維新後徐々に洋装になり、靴を履き、足を守るものが足袋から靴下へと戦後本格的に変わっていきました。国産靴下の歴史は150年ほど、その中で技術が磨かれ、靴下そのものも変化を遂げています。
日本の履きものや靴を脱ぐ文化、すこし掘り下げてみると面白いですね。
(2024年9月11日(水)奈良新聞掲載、宇宙一靴下大好き社長のくつ下話59号より)